【令和6年度版】キャリアアップ助成金とは?誰がもらえる?内容や申請の注意点も詳しく解説

キャリアアップ助成金は優秀な人材を確保し、企業の生産性を向上するために利用できる制度で、条件を満たせば多くの企業で利用可能です。

今回はキャリアアップ助成金の内容をはじめ、対象事業者について解説します。申請での注意点も紹介しますので、ぜひ参考にしてください。

なお、本記事では令和6年4月1日に発表された「キャリアアップ助成金パンフレット(令和6年度版)」を基に解説を行います。

キャリアアップ助成金とは

キャリアアップ助成金とは、契約社員・派遣社員・アルバイト・パートといった、いわゆる非正規雇用労働者のキャリアアップを推進するために、厚生労働省が設けた助成金制度非正規雇用で働く従業員の正社員化、もしくは賃金などの処遇改善のための取り組みを実施する事業主に対して助成されます。

キャリアアップ助成金は、支給要件を満たした事業主が申請し、内容や取り組みに問題がなければ受給できる仕組みです。

支給決定までに審査があり、採択された事業者だけに支援される補助金とは仕組みが異なりますので、事業者も前向きに従業員の処遇改善を検討しやすくなっています。

キャリアアップ助成金の対象事業主

キャリアアップ助成金の対象事業主は、以下のすべてに該当しているのが条件です。

雇用保険適用事業所の事業主雇用保険適用事業所ごとに、キャリアアップ管理者を置いている事業主雇用保険適用事業所ごとに、対象労働者に係るキャリアアップ計画を作成し、管轄労働局長の受給資格の認定を受けた事業主実施するコースの対象労働者の労働条件、勤務状況及び賃金の支払い状況等を明らかにする書類を整備し、賃金の算出方法を明らかにすることができる事業主キャリアアップ計画期間内にキャリアアップに取り組んだ事業主

引用:厚生労働省「キャリアアップ助成金のご案内(令和6年度版)

助成金の対象外となる事業主

また、助成金の対象外となる事業主は以下のとおりです。

支給申請した年度の前年度より前のいずれかの保険年度の労働保険料を納入していない事業主支給申請日の前日から過去1年間に、労働関係法令の違反を行った事業主性風俗関連営業、接待を伴う飲食等営業またはこれらの営業の一部を受託する営業を行う事業主暴力団と関わりのある事業主暴力主義的破壊活動を行った、または行う恐れがある団体等に属している事業主支給申請日、または支給決定日の時点で倒産している事業主支給決定時に、雇用保険適用事業所の事業主でない事業主

引用:厚生労働省「キャリアアップ助成金のご案内(令和6年度版)

上記のいずれかに該当する事業主は、助成金を受給できません。注意してください。

キャリアアップ助成金での「中小企業事業主」の範囲

キャリアアップ助成金では、中小企業事業主を以下の範囲で定義します。

業種資本金の額・出資の総額と常時雇用する労働者の数
小売業(飲食店を含む)5,000万円以下または50人以下
サービス業5,000万円以下または100人以下
卸売業1億円以下または100人以下
その他の業種3億円以下または300人以下
引用:厚生労働省「キャリアアップ助成金のご案内(令和6年度版)

常時雇用する労働者の数とは、主に2ヶ月以上雇用され、週当たり所定労働時間が正社員とほぼ同等である従業員のことです。

企業の規模によって助成金の額が異なるため、申請前に必ず確認してください。

キャリアアップ助成金は大きく分けて2種類

キャリアアップ助成金は、大きく次の2つに分かれます。

  • 正社員化支援に関するコース
  • 処遇改善支援に関するコース

正社員化支援に関するコースには、さらに2つのコースがあり、処遇改善支援に関するコースには4つのコースがあるため、厳密には6つのコースに分類できます。

それぞれ詳しく見ていきましょう。

正社員化支援に関するコース

正社員化コースは、有期雇用の非正規労働者の正社員化を助成するコースです。

労働者の正社員化が目的のため、はじめから正規雇用されている労働者や、無期雇用を条件に雇用された労働者は対象になりません。

なお令和6年度版より、正社員として6ヶ月間雇用された労働者が正社員としてさらに6ヶ月雇用された場合、2期目の支給申請が可能になりました。

これまで助成金が申請できるのは1期(6ヶ月)のみで、中小企業の支給額は57万円。令和6年度からは2期(12ヶ月)で最大80万円の申請も可能になり、大幅に拡充されています。

なお同じ対象者での2回目の申請を除き、年度内の1事業所あたりの支給申請上限人数は、20名です。

また正社員支援には、障害者正社員化コースもあります。

  • 重度身体障害者、重度知的障害者および精神障害者
  • 重度以外の身体障害者、重度以外の知的障害者、発達障害者、難病患者、高次脳機能障害と診断されたもの

上記に該当する労働者を正社員化したときに、助成申請が可能です。

処遇改善支援に関するコース

処遇改善支援に関するコースには、以下の4つがあります。

賃金規定等改定コース有期雇用労働者等の基本給の賃金規定等を改定し、3%以上増額した場合に助成
賃金規定等共通化コース雇用するすべての有期雇用労働者等に、正規雇用労働者と共通の職務に応じた規定等を新たに作成、適用した場合に助成
賞与・退職金制度導入コースすべての有期雇用労働者等に関して、賞与・退職金制度を新たに設け、支給または積み立てを実施した場合に助成
社会保険適用時処遇改善コース短時間労働者に、以下のいずれかの取り組みを行った場合に助成
新たに社会保険の被保険者要件を満たし、被保険者となった際に、賃金総額を増加させる取り組みを行った所定労働時間を週/4時間以上延長するなどし、当該労働者が社会保険の被保険者となった場合
参考:厚生労働省「キャリアアップ助成金のご案内(令和6年度版)

正社員化は難しくても、処遇改善で従業員の就業定着率を高めたい事業者にとって、より取り組みやすい制度といえるでしょう。

キャリアアップ助成金の支給額一覧

キャリアアップ助成金は、申請するコースによって支給額が異なります。

また令和6年度からキャリアアップ助成金(正社員コース)の支給額が大幅に増額されました。

変更点や支給額の詳細について、一覧で見ていきましょう。

【正社員化コース】

正社員化コースでは、就業規則や労働協約などの制度に基づき、有期雇用労働者等を正社員化した場合に助成されます。

なお、令和6年度から正社員化コースにおいて、助成金の支給対象期間が現行の「1期(6ヶ月)」から「2期(12ヶ月)」に変更されました。

参考:厚生労働省「キャリアアップ助成金のご案内(令和6年度版)

※労働者1人あたりの助成額

有期雇用労働者無期雇用労働者
中小企業80万円(40万円×2期)40万円(20万円×2期)
大企業60万円(30万円×2期)30万円(15万円×2期)

これにより、労働者1人あたりの助成金は最大で80万円(40万円×2期)に増えました。

従来の1期分57万円の支給から大幅に増額されています。

なお令和6年度版では、加算額についても以下の2つが増額・新設されました。

④正社員転換制度を新たに規定し、当該雇用区分に転換等した場合新設令和6年度20万円(大企業15万円)
⑤多様な正社員制度を新たに規定し、当該雇用区分に転換等した場合増額令和5年度95,000円(大企業71,250円)→令和6年度40万円(大企業30万円)

「多様な正社員」とは、勤務地や職務の限定や、短時間勤務で働く正社員のいずれか1つの制度をあらわします。

このようにキャリアアップ助成金は、多様性が求められる現代にさらに合わせた制度になりました。

<加算額一覧>

措置内容有期雇用労働者無期雇用労働者
①派遣労働者を派遣先で正社員として直接雇用する場合28万5,000円
②対象者が母子家庭の母等または父子家庭の父の場合95,000円47,500円
③人材開発支援助成金の訓練終了後に正社員化した場合(自発的職業能力開発訓練または定額制訓練以外の訓練終了後)95,000円47,500円
(自発的職業能力開発訓練または定額制訓練終了後)11万円55,000円
正社員転換制度を新たに規定し、当該雇用区分に転換等した場合(1事業所あたり1回のみ)20万円(大企業15万円)
多様な正社員制度を新たに規定し、当該雇用区分に転換等した場合(1事業所あたり1回のみ)40万円(大企業30万円)

【賃金規定等改定コース】

賃金規定等改定コースでは、有期雇用労働者等の基本給の賃金規定等を3%以上増額改定し、その規定を適用させた場合に助成されます。

参考:厚生労働省「キャリアアップ助成金のご案内(令和6年度版)

企業規模賃金引き上げ率
3%以上5%未満5%以上
中小企業5万円6万5,000円
大企業3万3,000円4万3,000円

※職務評価の手法の活用で賃金規定等を増額改定した場合は、中小企業で20万円。大企業で15万円を、1事業所あたり1回のみ加算する。

【賃金規定等共通化コース】

賃金規定等共通化コースでは、就業規則や労働協約の定めにより雇用するすべての有期雇用労働者等に、正規雇用労働者と共通の職務に応じた賃金規定等を新たに作成し、これを適用した場合に助成されます。

参考:厚生労働省「キャリアアップ助成金のご案内(令和6年度版)」

企業規模支給額
中小企業60万円
大企業45万円

【賞与・退職金制度導入コース】

賞与・退職金制度導入コースでは、就業規則や労働協約の定めにより、すべての有期雇用労働者等に関して賞与・退職金制度を新たに設け、支給または積み立てを行った場合に助成されます。

参考:厚生労働省「キャリアアップ助成金のご案内(令和6年度版)

企業規模制度
賞与又は退職金制度を導入賞与及び退職金制度を同時に導入
中小企業40万円56万8,000円
大企業30万円42万6,000円

【社会保険適用時処遇改善コース】

社会保険適用時処遇改善コースでは、雇用する短時間労働者に、以下のいずれかの取り組みを行った場合に助成されます。

・新たに社会保険の被保険者要件を満たし、被保険者となった際に賃金総額を増加させる取り組みを行った場合
・週の所定労働時間を4時間以上延長するなどし、労働者が社会保険の被保険者要件を満たして被保険者となった場合

参考:厚生労働省「キャリアアップ助成金のご案内(令和6年度版)

(1)手当等支給メニュー

企業規模①1年目の取組2年目の取組③3年目の取組
中小企業40万円(10万円×4期)10万円
大企業30万円(7.5万円×4期)7.5万円

(2)労働時間延長メニュー

延長時間4時間以上3時間以上4時間未満2時間以上3時間未満1時間以上2時間未満
賃金引き上げ率5%以上10%以上15%以上
企業規模中小企業30万円
大企業22.5万円

参考:厚生労働省「キャリアアップ助成金のご案内(令和6年度版)」

キャリアアップ助成金は誰がもらえる?

キャリアアップ助成金を受け取れるのは、従業員ではなく、申請した事業主。

事業主からの支給申請後、該当する従業員1人あたりの金額で算出した総額を支給する仕組みです。

キャリアアップ助成金の申請の流れ

キャリアアップ助成金は、以下の図の流れで申請を行います。

画像参考:厚生労働省「キャリアアップ助成金」

キャリアアップ助成金の活用を希望する事業主は、はじめに「キャリアアップ計画」等を作成し、労働局やハローワークへ提出し、その後就業規則等の改定や従業員の正社員化を実施します。

キャリアアップ助成金の支給申請ができるのは、これらの取組後6ヶ月の賃金を支払った日の翌日からです6ヶ月の賃金支払いが完了する前は支給申請できないので、注意しましょう。

キャリアアップ助成金の注意点

最後に、キャリアアップ助成金の注意点を3つ紹介します。

事業主や取締役の親族は対象外

キャリアアップ助成金では、事業主や取締役の親族は対象外です。

厳密には3親等以内の親族(配偶者、3親等以内の血族及び姻族)は、助成対象になりません。

受給までに時間がかかる

キャリアアップ助成金は、実際の処遇改善や正社員化を行い、さらに6ヶ月間の賃金支払いを実施してからでないと支給申請ができません。

申請後の審査結果が出るまで時間がかかるため、支給が1年後になるケースもあります。

申請内容や取り組み内容に問題がなければ基本的に支給対象となりますが、受給まで時間がかかる点は注意しておきましょう。

審査が厳しい

残念ながらキャリアアップ助成金は一時期、不正受給が相次ぎました。不正受給を防ぐため、一度提出した書類は差し替えや訂正を行うことはできません。また提出する出勤簿や賃金台帳等は、原本もしくは複写機等を使って複写したものである必要があります。その他にもいくつかの留意事項があり、これらに違反すると不支給となってしまいます。

審査に通るには支給要件を正しく理解し、趣旨に沿ったキャリアアップ計画書を提出したうえで、これに基づく取り組みを実行することが大切です。作成に不安がある方は、助成金の申請に詳しい専門機関への相談をおすすめします。

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キャリアアップ助成金は多くの企業が利用しやすい制度ですが、従業員の正社員化や処遇改善は事業の今後を大きく左右するため、経営に関するスペシャリストとの相談がおすすめです。

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